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2013.06.28「水を2リットル飲むことは必要?」

診察していると、患者さんから「水は1日、リットル(以下、Lと表記)以上ちゃんと飲んでます!!!」と自信をもって答えてくれる方がいます。

「なぜ2L飲んでいるんですか?」と尋ねると、患者さんは「TVで2L飲んだほうがいいと言っていたから」と答えられます。(悲しいかな、メディアの情報に洗脳されている方々。。。)

「その考え方は、間違っておられますよ」とお伝えすると、たいていの方は「???」となってしまいます。さて、今回は、人間の水分摂取量(飲料水と水分を区別して書いてます)についての話です。

結論からいえば、

「1日に飲料水だけを2L飲むことは間違い。ただし、人間に必要な水分は、1日につき約2Lである。」というのが、人間の生理学的に正しい考え方です。

要するに飲料水だけで2L取ることが間違いなのです。これは、科学的根拠はまったくありません。(出処は、メディアのダイエット情報か?)

そこで、生理学的に人間の水分排泄量と摂取量を考えてみます。

人間の体内からの水分排泄量は、成人男子で、1日2,300mlです。
もちろん体を動かした時や暑いと時などはそれ以上の水分が排出されます。

1日に排出される水分の内訳は、大体次のようになります。
 尿:1,200ml
 糞尿:200ml
 不感蒸散:900ml

不感蒸散とは呼気に含まれる水蒸気として体外に吐き出されたり、皮膚表面から感知できない程度に分泌される汗のことです。この量が毎日排泄されているので、これに等しい分だけの水分の補給が必要となります。

ちなみに1日に最低でも400mlの尿が出ないと、不要な物質が体内に溜まり、生命にとって危険な状態になります。これを高窒素血症といいます。尿量の病的な減少は、すなわち腎不全状態の発症と直結した病態になります。

そして、排泄された水分を補う必要があります。

上記のとおり、水分排泄量が成人男子で、2,300ml/日ですから、水分を1日に必要最小限2Lを摂る必要があります。しかし、飲料水だけで水分を摂っているのではありません。食事にも水分が含まれています。水分摂取量の全てを合計して、平均的に約2Lということです。

1日に補給すべき必要最低限の水分量は、大体次のようになります。
 飲料水:1,200ml
 食物:800ml
 代謝物:300ml

食物から摂る水分は、具体的には、ご飯や味噌汁、果物、野菜などがあります。

代謝物とは体内でタンパク質や炭水化物、脂肪などが酵素によって分解される時に排出される水分をいいます。

食事で水分を摂っているにもかかわらず、それ以外に飲料水で2L取ると明らかに水分の摂りすぎになります。全身はむくみ、身体は冷えて、血流、リンパの流れも悪くなります。(東洋医学的には、水毒といいます)また、体内の塩分バランスがありますから、水分を摂って、体液が薄まると、バランスを取ろうとして、今度は塩分が欲しくなります。

塩分を摂るとると、体がむくむというのは、その逆で、塩分を摂りすぎると、体液の塩分を薄めようと、水分が欲しくなります。そうなると、結果的に、体がむくみ、血液量が増えて血圧が上がります。血圧の高い人は、塩分(精製され、ミネラルが含まれていない食塩のこと)を控えるというのは、こういう理由です。

水分の摂りすぎは高血圧にもつながりますので、飲料水2Lを飲まれている方は、今すぐ!やめる事をお勧めします。
生理学的に、飲料水を飲むタイミングは、「体が欲して、喉が渇いた時に飲む」のがいいのです。このタイミングで飲んでいれば、水分の摂り過ぎということがほぼなくなります。

水分が不足すると、血液が粘体性(どろっと粘りのある状態)になりやすいので、脳梗塞や心筋梗塞、静脈血栓塞栓症(俗称でエコノミークラス症候群)といった血管が詰まる病気が起こりやすくなります。

水を飲むことは、健康を保つ上で非常に大切なのです。

飲料水の摂り過ぎ、摂らなさ過ぎも体に良くありません。

適度な水分摂取、排泄に努めてください。

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